佐紀ちゃん…ゴメン… | 好きよキャプテン

佐紀ちゃん…ゴメン…

もうここには帰って来ないつもりだった

そう、僕にはここに帰る権利なんて存在しない

余りにも厚顔無恥ではないか

あんなにひどいことをしておいて

またここに帰ってくるなんて…

 

 

でも…

 

 

気付けばドアの前に立っていた

 

 

外は春の嵐であった

僕は傘もささずにドアの前に立っていた

 

 

小さな人影が歩いてきた

僕が目の前に立っているドアを目指して歩いてきた

僕のほうを目指して歩いてきた

 

 

 

「お帰りなさい」

 

 

「…」

 

 

「ほら、濡れちゃうよ?」

 

 

「…」

 

 

「ほら、早く中に入って!お風呂入らないと風邪ひいちゃうよ?」

 

 

嵐のお陰で

僕はどれだけ涙を流しても

佐紀ちゃんに気付かれなかった

初めて嵐に感謝した

 

 

 

 

 

 

 

 

『涙くんさよなら』という曲がある

 

 

 

涙君さよなら さよなら涙君 また会う日まで

君は僕の友達だ この世は苦しいことだらけ

君なしではとても 生きて行けそうも無い

だけど僕は恋をした すばらしい恋なんだ

だからしばらくは君と 会わずに暮らせるだろ

涙君さよなら さよなら涙君 また会う日まで

 

 

 

正直な話

恋をしたら涙は出るだろ?と思わなくもないが

この歌の『涙君』を『佐紀ちゃん』にすれば

大体は間違っていない

 

 

 

いくら佐紀ちゃんに恋しても

佐紀ちゃんの温もりは

握手会でしか

営業用の握手会と営業用のスマイルしか

手に入れる事が出来ないわけだ

僕は恋をして佐紀ちゃんを捨てた

 

 

 

しかしだ…

 

 

 

僕は恋を止めた

別に誰が悪いわけではない

僕が恋を止めれば

全体が上手くいく

そう思ったから僕は止めた

 

 

 

だから僕は…

再び佐紀ちゃんなしでは生きていけなくなった

 

 

 

ただいま、佐紀ちゃん